| ランドセル |
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ぼくが大学に受かった日、突然におばあちゃんは意識をなくした。 ぼくは中学を出てから、高校受験に失敗し大検をとり、浪人して今年何とか大学に受かった。はっきり言って、つらかった。だから、大学合格の通知が来たときには、本当に最高にうれしかった。真っ先に一緒に浪人していた友達に電話した。そして、友達の家で昼頃から小さなパーティーをした。友達と、大学に入ってからのサークルの話などをして、その時間を過ごし夜の八時頃に家に帰った。すると、家に何台も車がきていた。ぼくは、なんだろうと思い、急いで家の中に入った。ぼくが家に入ると、すぐに、母がぼくをおばあちゃんの部屋に呼んだ。ぼくは、おばあちゃんが大学に受かったお祝いに、何かくれるのかと思って、走っておばあちゃんの部屋に向かった。でも、ぼくは、おばあちゃんの部屋に着き、すぐに言葉を失った。 おばあちゃんは、ベッドの上でいつもどおりに寝ていた。その様子は本当にいつもどおりだった。でも、その横では、医者が手を合わせていた。ぼくは言葉を失って、ただ立ちつくした。そんなぼくを父は、手まねきでよんだ。ぼくは父の横に行った。父は言った。 「おばあちゃん気持ちよさそうだろ。おまえが出かけたすぐ後にな、おまえの合格を知らせたら、いきなり安心して、油断したみたいでな、うれしそうな顔をしたまま意識を失ってな、そのまま、ついさっきいっちまったい」 父の目から涙がこぼれた。ぼくは、どうしていいかわかんなくて、ただおばあちゃんの顔を見つめた。そんな僕に母が言った。 「おばあちゃんの一番最後の言葉、傑作だったんだよ。・・・おばあちゃんね、私にお金を渡して、これでランドセルかってやっておくれ、だって」 母は泣きながら言った。そして、ぼくに数万円入ったお年玉袋を4つ渡した。 おばあちゃんがぼくに言っていたことを思い出した。 「大学に入るまで、お年玉はなしだよ」 そして、中学を出てから4年間、一切お年玉もそして小遣いもくれなかった。ぼくは、もうぼけちゃったからしかたないかと、ただあきらめていた。 ぼくはおばあちゃんの眠るベッドの横でひざまづき、おばあちゃんの手を握った。でも掛ける言葉は何も浮かばなかった。ただ、おばあちゃんの冷たい手がくやしかった。 しばらくして、そんなぼくの肩に手をおいて、母は言った。 「おばあちゃんの気持ちよさそうな顔を見てごらん。お前が泣いたら、おばあちゃんも悲しくなっちゃうだろ。せっかく気持ちよく天国に行こうとしているのに」 ぼくは涙を拭き、おばあちゃんに言った。 「ありがとう」 そのときのぼくにはこの言葉以外、言うべき言葉が浮かばなかった。 |