| どしゃぶりの横断歩道 |
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その日は朝からどんより曇っていて、今にもパラパラときそうなお天気でした。それでもどうしても出かけなければならず、急いで家を出ました。 昨夜、生後6ヶ月の双子の娘が急に熱を出し、咳もひどいので、夜が明けるのを待って病院へ急いだのです。一人はおんぶし、もう一人は両手でだっこして、左手にはオムツやミルクや着替えを入れた大きなバックをぶら下げ、母親ならではの力持ちの姿です。 バスを降りて、もうあと一息というところの信号でとうとうパラパラときました。私は濡れてもいいけれど、赤ちゃんが濡れて肺炎にでもなったら大変です。そこで黄信号だったけれど、 「えーい、ままよ」 と飛び出したところ、ダンプカーが2台、目前に迫ってきて急停車し 「ブッブー!」 と大きなクラクション。一瞬ビクッとして立ち止まり、 「すみません」 と言ったけれど、聞こえるはずもありません。さらに私が小走りで駆け抜けようとしたら、突然運転手さんが降りてきて、私に突進してきました。 「あー!やばい。どなられる。もうダメや」 と思って体をこわばらせていると、 「あんた、そこの病院へ行くんか。一人抱いたるから、こっちへ渡し。荷物はもう一人のヤツに持たせたらええ」 と、すばやく私から受け取ると、一目散に病院へ走って行ってくれました。 私は背中の赤ちゃん一人で身軽になったので彼のあとを追って、病院の入り口に走りこみました。その途端、「ザァー」と大降りの雨。私が、 「ありがとう、ありがとう」 とお礼を言うと、にこっと笑って雨の中を走ってダンプカーに戻っていかれました。その顔も姿も神々しくて、しばらく動けませんでした。 あれから16年たっても、私はダンプカーやトラックの運転手さんに出会うと、自然にほほ笑んで、会釈して道路を渡っています。あの時抱いてもらった娘も高校一年生。 あのときの運転手さんの親切と笑顔は忘れられません。 娘と一緒に、他の人に親切のお返しをしなくては、といつも思っています。 |